学会誌 VOL.17 No.4 December 2024
原著論文
外来がん患者におけるオピオイド継続のための薬剤師による診察前面談の効果的な介入内容とタイミング |
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鈴木宣雄・木村美智男・神田友江・大西利佳・宮田恵里花・大塚崇史・宇佐美英績 |
[要旨] 薬剤師による診察前面談の有無によるオピオイドの継続性を比較することにより効果的な介入内容およびタイミングを明らかにする.2018 年~ 2022 年に,大垣市民病院の外科においてオピオイドを導入した外来がん患者を対象として,導入後の受診 2 ~ 5 回目の処方変更状況(投与量変更なし・増・減量,スイッチング,再開および中止)を薬剤師による診察前面談がある群とない群で評価した.診察前面談がない場合は,オピオイド導入後2 回目の中止が多かった(p = 0.016).2 回目において,オピオイドスイッチングは,診察前面談がある群(5/28例)がない群(1/71 例)に比べて多かった(p = 0.007).また,副作用によるオピオイドの中止は,診察前面談がある群が 1 例に対してない群は 5 例であった.オピオイド服用患者への薬剤師による 2 回目の診察前の面談・評価は,適切な薬物治療支援を可能とし疼痛緩和に貢献できると考える. |
キーワード: 薬剤師,オピオイド,外来診療,がん疼痛 |
多職種連携チームによる包括的ながん悪液質対策の実践と評価 |
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香内 綾・木本真司・成田浩気・河原史明・峯岸智之・齋藤浩司・山浦 匠・遠藤美織・ 五十嵐元子・石田秀雄・佐藤志保・五十嵐淳平・佐藤大夢・田中さゆり・鈴木澄恵・ 志水美紀子・石本由美・井上さやか・武藤由美・佐藤ひろ子・穴澤早苗・石橋和幸・ 佐藤好治・絹田俊爾・萩尾浩太郎 |
[要旨] がん悪液質対策のための多職種連携プログラムを構築した.本研究の目的は,アナモレリン投与に栄養療法と運動療法を加えた併用療法の効果を評価することである.対象は,がん悪液質と診断され,12 週間アナモレリンを服用したがん患者 23 例である.本プログラムでは,患者ごとに栄養療法と運動療法を設定した.評価は,体組成,栄養状態,身体機能,および Quality of Life で行い,開始前と 12 週間後の値を比較した.除脂肪体重,体重,骨格筋量,プレアルブミン濃度,FAACT 評点,PG-SGA 評点,栄養補充率,6 分間歩行距離,握力,QOL (項目:やせましたか?)において有意な差が認められた.がん悪液質患者において,アナモレリン投与に栄養療法と運動療法を併用することは,栄養状態が改善され,筋力や身体機能の改善につながる可能性が示唆された. |
キーワード: がん悪液質,アナモレリン,がん栄養療法,がんリハビリテーション |
緩和ケア患者の腎機能評価の適正化にGeriatric Nutritional Risk Indexは有用であるか |
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前田直大・日下部鮎子・長谷川むつ子・和智純子・菊池 健・岩山訓典・佐藤秀紀・坂東 勉 |
[要旨] 日常診療では,血清クレアチニンから算出される推定糸球体濾過量(eGFRcre)が腎機能の評価に広く用いられている.しかし,eGFRcre は筋肉量の影響を受けるため,パフォーマンスステータス (PS)の低下や低栄養状態の患者では,筋肉量の低下に伴い腎機能が過大評価される可能性がある.筋肉量の影響を受けないとされる血清シスタチン C から算出する(eGFRcys)で反映できるが,保険適応上,3 か月に 1 回しか算定できないなど,検査に制限がある.本研究では,緩和ケア領域で腎機能評価をする際に,栄養評価指標である Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いて,低栄養状態が eGFRcys と eGFRcre の差に影響を及ぼすかを評価した. eGFRcys と eGFRcre の差を比較した結果,重度栄養リスクである GNRI 82 未満群と日常生活が制限され臥床時間が長い PS 3 以上群で乖離が有意に大きいため,GNRI と PS が eGFRcys と eGFRcre の差に影響を与える因子と考えられる. |
キーワード: 緩和ケア,腎機能,栄養評価,GNRI,パフォーマンスステータス |
短 報
終末期がん患者の予後予測指標としてのBerthel Indexの食事動作項目の有用性に関する一提案 |
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岡本伸也・岡崎和子・番匠谷研吾・岡田昌浩・村上史承・杉原弘記・星野祥儀・ 小川裕香・竹井英介・竹田修三・杉原成美 |
[要旨] Barthel Index(BI)の項目の 1 つである食事の項目(食事動作)が終末期がん患者に対する予後予測指標として有用か否かを明らかにするため,WPCBAL score と比較した.2 週間後の予後予測において,食事動作が全介助/部分介助または自立をカットオフ値として予測した際の感度は 0.357,特異度は 0.964,および診断精度は0.661 であった.一方,WPCBAL score が 5 点以上/4 点以下をカットオフ値として予測した際の感度は 0.750,特異度は 0.500,および診断精度は 0.625 であった.また,食事動作と WPCBAL score の Kappa 係数は 0.194 であった.本研究により,2 週間後の予後予測指標としての特性が食事動作と WPCBAL score で異なる可能性が示された. |
キーワード: 食事動作,Barthel Index,予後予測,終末期がん患者 |