学会誌 VOL.17 No.1 March 2024
原著論文
Effect of Fentanyl Coadministration on the Prothrombin Time-International Normalized Ratio in Patients Receiving Warfarin: A Multicenter Retrospective Observational Study |
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Katsuya MAKIHARA, Yasushi HABU, Yasuko ISHIHARA, Emi GOTO, Shintaro YOSHINO, Daisuke MIOKI, Tomohiko EJIMA, Shino MIMATSU, Yoshiyuki RIKITAKE, and Okiko MIYATA |
Abstract: Several opioid analgesics potentiate the anticoagulant effects of warfarin. However, the effect of concomitant fentanyl and warfarin use on coagulation activity has not been adequately studied. We conducted a multicenter retrospective study encompassing seven hospitals to explore the effect of fentanyl on coagulation activity in patients treated with warfarin. The data in this study were obtained 4 weeks prior to and 4 weeks after the start of fentanyl administration. Forty-six patients were included in this analysis. The maximum prothrombin time-international normalized ratio (PT-INR) after fentanyl concomitant [median: 2.70 (range: 1.09-7.46)] was significantly higher than that PT-INR before fentanyl concomitant [median: 1.73 (range: 1.04-3.67); p < 0.0001]. The decrease in serum albumin (ALB) after concomitant fentanyl treatment was significantly greater in patients with PT-INR elevation [median: - 0.40 g/dL (range: - 1.2-0.1)] than in those without [median: - 0.15 g/dL (range: - 1.0-0.6); p = 0.001]. In patients with decreased ALB, PT-INR was significantly higher after concomitant fentanyl treatment [median: 3.16 (range: 1.13-7.46)] than before it [median: 1.86 (range: 1.04-2.87); p = 0.0019]. Furthermore, even in patients whose ALB did not decrease, PT-INR was significantly higher after fentanyl concomitant [median: 2.21 (range: 1.09-7.33)] than before it [median: 1.72 (range: 1.10-3.67); p = 0.0031]. Thus, concomitant fentanyl use may potentiate the effects of warfarin in patients who receive it. In particular, the PT-INR should be closely monitored in patients with decreased ALB. |
Key words: warfarin, fentanyl, drug-drug interaction, prothrombin time-international normalized ratio,serum albumin |
COVID-19流行下における薬学部実務実習で実施した緩和ケア実習の教育効果 |
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川田哲史・大津友紀・角 康隆・井上貴文・武田佳子・江越菜月・兼重 晋・神村英利 |
[要旨] 新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)流行下で実施した薬学部実務実習における緩和ケア実習の満足度と理解度を実習前後ならびに講義中心の 2020 年度とカンファレンスに参加した 2021 年度で比較し,教育効果を検証した.緩和ケアに関する自己評価および問題正答率共に,実習前と比べて実習後で有意に向上した.顧客満足度分析の結果,両年度の実習形式で重点改善項目や維持項目に違いがみられ,知識の向上には臨床に則した講義が,実習に対する満足度には実臨床に触れる機会が有用であることが示唆された.これらのことから,実臨床に沿った講義と参加・体験型の実習を組み合わせることで,実習生の理解度と満足度を高めることができると考えられる.また,COVID-19 のような新興感染症の流行期は,参加 ・ 体験型の実習が困難な場合もあり,遠隔教育システムのような仕組みも整備していく必要があると考えられる. |
キーワード:緩和ケア,実務実習,教育,薬学部,新型コロナウイルス感染症 |
「ダメ.ゼッタイ.」普及運動は医療用麻薬の適正使用に影響しているか? |
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鈴木 勉・長谷川真司・加賀谷肇 |
[要旨] 「ダメ.ゼッタイ.」普及活動は 1993 年から開始され,当時の中学生,高校生は現在 40 歳代になっている.50 歳代以上はこのような「ダメ.ゼッタイ.」普及教育は受けていない.「もし,がん等による激しい痛みが生じ,医師から医療用麻薬の使用を提案された場合,あなたは医療用麻薬を使用したいと思いますか?」の質問に 40歳代は使用したいと思うと回答した者が 50.9% であったのに対し,50 歳代では 60.5% と増加している.これは,「ダメ.ゼッタイ.」普及教育を受けていないことから,医療用麻薬に対する抵抗感が少ないものと考えられる.60歳代,70 歳代もさらに肯定的に捉える人が微増しているが,おそらくこの世代になると身近な人ががん疼痛を医療用麻薬で治療していることを耳にしていることも一因と考えられる.さらに 30 歳代,20 歳代は医療用麻薬の使用への抵抗感が強くなっている. したがって,「ダメ.ゼッタイ.」普及運動を行う際には,医療用麻薬の適正使用の推進についても併せて教育することが肝心である. |
キーワード:医療用麻薬,乱用防止,がん疼痛,医療用麻薬の適正使用,アンケート調査 |
短 報
メサドンの服用タイミングの変更によって傾眠を軽減できた1症例 |
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吉田謙介・松本吉史・磯貝和也・工藤範子・佐々木健太・阿部聡美・外山 聡 |
[要旨] メサドン導入時に強い傾眠が現れたが,服用方法を朝昼夕食後から朝食後,夕食前,寝る前に変更することにより用量を減量させることなく,症状を改善することができたので報告する.また,服用タイミングの変更による NRS の増加およびその他の有害事象は出現しなかった. |
キーワード:メサドン,傾眠,用法 |
オキシコドンの鎮痛耐性形成を疑い,モルヒネへ変更したことにより 疼痛が改善した1例 |
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高野陽平・渡部直己・西崎颯斗・大田 歩・上野英文 |
[要旨] オキシコドンの鎮痛耐性は形成されにくいことが知られている.しかし,実臨床においては鎮痛耐性を疑う症例がまれに存在する.今回,高用量のオキシコドンでは疼痛コントロール不良であったが,換算比より少ない用量でのモルヒネへのオピオイドスイッチングにより,疼痛コントロールが改善した症例を経験したので報告する. |
キーワード:オキシコドン,オピオイドスイッチング,鎮痛耐性 |