学会誌 VOL.16 No.3 September 2023
原著論文
薬局薬剤師に対する緩和ケアの相談支援体制の必要性と実行可能性の調査 |
---|
土井真喜、佐藤由美、飛鷹範明、文 靖子、岡本晃典、国分秀也 |
[要旨] 保険薬局が質の高い緩和ケアを提供する際の障壁として,患者情報や知識の不足などが報告されている.また,緩和ケアの専門知識や技能を有する薬局薬剤師は少なく,実臨床で困った場合に緩和ケアに関する相談支援を求めることは容易ではない.そこで,薬局薬剤師の緩和ケアに関する現状および必要な相談支援,その支援に対する緩和薬物療法認定薬剤師および緩和医療暫定指導薬剤師(以下,認定薬剤師)の自信や時間的余裕を把握するため,薬局薬剤師および認定薬剤師を対象に web 方式のアンケート調査を実施した.薬局薬剤師は緩和ケアへの意欲はあるが,疼痛アセスメントやオピオイドの投与量調節などの相談支援を必要としていることが明らかとなった.また,認定薬剤師の大半は相談支援に対して自信を示し,条件があえば相談支援は可能であった.認定薬剤師による薬局薬剤師への相談支援体制の必要性および実行可能性が示唆された. |
キーワード:地域緩和ケア,保険薬局薬剤師,相談支援,緩和薬物療法認定薬剤師,緩和医療暫定指導薬剤師 |
非がん性疼痛を有する患者のオピオイド使用状況モニタリングにおける薬剤師介入の効果 |
---|
飯田真之、大村友博、志田有里、番匠咲帆、大本暢子、山下和彦、槇本博雄、山本和宏、矢野育子 |
[要旨] 神戸大学医学部附属病院では,緩和ケアチーム担当薬剤師が WHO 方式がん疼痛治療法の鎮痛薬リストの強オピオイド鎮痛薬が処方された入院患者をモニタリングしている.今回,非がん性疼痛患者への強オピオイド使用に際して,薬剤師が検出した緩和薬物療法に関する薬物関連問題(Drug Related Problem,以下 DRP)とその転帰について後方視的評価を行った.解析対象患者 82 名のうち 47 名(57.3%)に DRP を検出し,うち 31 名に対して病棟薬剤師を介して介入を行った結果,27 名の DRP が解消された.初回モニタリング時に検出し,介入したDRP としては,ガイドラインからみた不適切使用・禁忌(15 件)や,適応のない薬剤の選択(18 件)が多かった.緩和ケアチーム薬剤師が非がん性疼痛に対するオピオイド処方患者を一元的にモニタリングすることで,DRP を効率的に検出し,その解消につながる可能性がある. |
キーワード:オピオイド,非がん性疼痛,薬物関連問題,薬剤師介入 |
短報
肝機能障害患者に対するジクロフェナクナトリウム経皮吸収型製剤の導入 |
---|
淡路健作、髙瀬久光 |
[要旨] がん疼痛はがん患者に高頻度で見られる.2021 年 5 月にジクロフェナクナトリウム経皮吸収型製剤が上市された.今回,肝機能障害を有する膵臓がん患者に本剤を導入し,肝機能の著明な悪化なく安全に投与できた症例を経験したので報告する.この経験から,本剤は同障害を有する患者に対し鎮痛薬の選択肢の一つとなりうると考えた. |
キーワード: がん疼痛,肝機能障害,ジクロフェナクナトリウム経皮吸収型製剤 |
オピオイドの増量が困難な難治性咳嗽に対してプレガバリンを投与した1例 |
---|
水上康弘、和久井卓、田村淳、奥山裕子、本田和則 |
[要旨] がん患者の咳嗽治療薬は選択肢が少なく,その有効性も十分とは言いがたい.本症例の患者は,鎮咳目的のオピオイド導入後に,便秘と下痢を繰り返したため,オピオイド増量に強い抵抗感があった.また,一般的な鎮咳薬およびデキサメタゾンも無効であった.そこで,慢性咳嗽に対して有効性が報告されているプレガバリンを低用量で投与し,効果が得られた.推奨される鎮咳薬が無効の咳嗽に,プレガバリンが選択肢になると考えられた. |
キーワード:咳嗽,プレガバリン,オピオイド |