一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.16 No.2 June 2023

原著論文

緩和医療における点滴ルートマネジメント確立に向けた医療用麻薬注射薬の配合変化試験組合せ要望に関する全国調査
近藤匡慶、宗像千恵、龍 恵美、吉田真人、髙瀬久光、国分秀也
[要旨] 緩和医療領域では,限られた投与ルートで医療用麻薬を含むさまざまな注射薬が投与されることがあり,配合変化の危険性が高い.配合変化に関する情報提供は薬剤師の重要な業務であるが,医療用麻薬の配合変化試験データは少なく,薬剤師は不安を抱え情報提供を実施している.そこで,医療用麻薬の配合変化試験組合せおよび試験方法の要望を明らかにすべく,日本緩和医療薬学会所属薬剤師に対してアンケートを実施した.3,640 名中174 名から回答を得た.2 剤配合変化試験の要望薬剤は,59 種のべ 165 剤であった.多剤配合変化試験の要望は,組合せ 142 種のべ 188 通りであり,オクトレオチドが最も要望が多い薬剤であった.試験方法の要望では,ボトル内配合の試験時間を 7 日間から 14 日間への延長を求める意見を認めた.一方,試験濃度は,臨床濃度から高濃度とさまざまな意見があり,さまざまな配合濃度で検討する必要性が判明した.今回の結果を基に配合変化試験を実施することで,医療安全に貢献できると考える.
キーワード:緩和医療,配合変化,点滴ルートマネジメント,医療安全

Repeated Activation of Corticotropin-releasing Hormone Neurons in theParaventricular Nucleus of the
Hypothalamus Prolongs Postsurgical Pain
Sara YOSHIDA, Kenichi TANAKA, Michiko NARITA, Yoshiyuki YAMABE, Tomohisa MORI, Yusuke HAMADA, Yukari SUDA, Naoko KUZUMAKI, and Minoru NARITA
Abstract: The change from acute to chronic pain after surgery is considered to be a major clinical problem. Furthermore, it is generally believed that stress, which activates corticotropin-releasing hormone (CRH) neurons in the paraventricular nucleus (PVN) of the hypothalamus, modifies the sensation of pain. In the present study, we investigated the causal relationship between stress, anxiety, CRHPVN neurons and persistent postsurgical pain in mice. We found that chronic restraint stress induced anxiety-related behaviors and enhanced mechanical allodynia after incision of the hind paw as postsurgical pain in C57BL/6J mice. Under these conditions, concomitant stimulation of CRHPVN neurons by a pharmacogenetic technique produced anxiety-related behaviors and prolonged persistent allodynia in response to mechanical stimuli after the incision. These findings indicate that concomitant activation of CRHPVN neurons accompanied by the stress-anxiety circuit prolongs postsurgical pain.
Key words:postsurgical pain, persistent pain, anxiety, corticotropin-releasing hormone,paraventricular,nucleus

短報

ヒドロモルフォンからモルヒネへのスイッチングが有効だった1例
加藤あゆみ、岡島美侑、岡村由美子、鈴木規仁、伊勢雄也
[要旨] オピオイド鎮痛薬を用いて疼痛緩和を試みる際,増量に見合う鎮痛効果が得にくくなることがある.今回,ヒドロモルフォンを増量しても疼痛緩和が得にくくなったのちにモルヒネへオピオイドスイッチングを行い,疼痛が軽減できた症例を報告する.
キーワード:ヒドロモルフォン,モルヒネ,オピオイドスイッチング

予後期間を考慮した薬学的ケアが退院につながった終末期がん患者の1症例
岡田昌浩、岡崎和子、村田年弘、杉原弘記、村上史承、岡本伸也、番匠谷研吾、神原弘恵、竹井英介、佐藤雄己、竹田修三、杉原成美
[要旨] 症例は 71 歳・女性.大腸がん(stage Ⅳ)の終末期の状態であったが,倦怠感があるため,希望していた退院を躊躇していた.そこで,薬剤師が予後予測指標を用いて予後期間の予測を行い,結果に基づいてステロイドを処方提案し,投与が行われた.その結果,倦怠感が改善し一時的に退院が可能となった症例を経験したので報告する.
キーワード: 予後予測指標,終末期がん患者,倦怠感

せん妄患者に対する院内製剤ペロスピロン坐薬の作製と使用経験
佐藤淳也、藤本泰輔、梅田鈴香、塚越真由美、田中 怜
[要旨] ペロスピロンは,鎮静効果が少ない非定型抗精神病薬として,せん妄治療に使用される.しかし,経口投与困難の場合,継続できない.院内製剤としてペロスピロン坐薬を調製した.せん妄に対して,これを使用した9 名において,導入前後 3 日間の抗精神病薬の追加および夜間のせん妄イベントはそれぞれ 3 名で減少した.中止に至る有害事象は観察されなかった.ペロスピロン坐薬は,経口投与できないせん妄に対する治療選択肢になると思われた.
キーワード:せん妄,ペロスピロン坐薬,院内製剤