学会誌 VOL.13 No.3 September 2020
総説
がん疼痛患者におけるメサドンの使用方法に関する文献的考察 |
---|
国分 秀也、中澤 慧州、龍 恵美、的場 元弘 |
[要旨] 現在,メサドンは世界各国で使用され,がん疼痛治療に有用性の高い製剤とされている.しかし,メサドンは薬物動態が複雑であり,呼吸抑制や QT 延長といった重篤な副作用を起こす可能性が指摘されている.また,本邦で上市されているメサドン製剤は,5 mg と 10 mg の錠剤のみであり,その使用方法も海外におけるガイドラインや各国の使用方法と異なる部分が存在する.そこで,今回,海外および本邦で公表された論文を幅広く検索し,メサドンの使用方法について検討した. |
キーワード:がん疼痛,メサドン,オピオイド |
原著論文
転院時のための県内医療施設におけるオピオイド採用状況のリスト化と解析 |
---|
宮原 強、松永 尚 |
[要旨] 近年,オピオイドの種類の増加に伴い,採用オピオイドの違いに起因した転院時の対応に苦慮することがある.そこで,佐賀県病院薬剤師会会員の 61 施設の薬剤師を対象にアンケート調査を行い,院内のオピオイド採用状況のリスト化と解析を行った.アンケート回収率は 87% であった.緩和ケアの病棟,チームを有する施設や地域医療支援病院に該当する施設のオピオイド採用種類は 15 品目であったが,該当しない施設では 7 品目と有意差が認められた.採用率については,長時間作用型ではフェンタニル貼付剤が 81%,短時間作用型では速放性トラマドール製剤が 89%,注射剤ではモルヒネ注射剤が 62% と最も高かった.一方,新規オピオイドのヒドロモルフォン,タペンタドール,メサドン製剤の採用率は 20% 以下であった.本研究により,オピオイドの採用種類には施設間で大きな違いがあり,特に新規オピオイド製剤の採用率は低いことが示された. |
キーワード:オピオイド,採用状況,転院 |
がん患者におけるデュロキセチンによる有害事象のリスク因子の検討 |
---|
槙原 克也、井上 聖夜子、嶽小原 恵、松村 友和、重岡 靖、池永 昌之 |
[要旨] がん患者においてデュロキセチンは神経障害性疼痛や化学療法誘発性末梢神経障害に用いられるが,投与開始から早期に有害事象による投与中止をしばしば経験する.そこで,デュロキセチンによる頻度の高い有害事象とそのリスク因子を探索した.デュロキセチン投与開始から 2 週間のうち,デュロキセチンに関連した有害事象の有無を後方視的に調査し,多変量ロジスティック回帰分析により独立したリスク因子を特定した.119 名のうち43 名(36.1%)に有害事象を認め,31 名(26.1%)は投与中止に至った.悪心は 18 名(15.1%)で最も頻度が高く,次に傾眠は 15 名(12.6%)で高かった.悪心のリスク因子は年齢が若いことであり(10 歳単位のオッズ比 1.79; [95% CI 1.19-2.84] ; p = 0.008),傾眠のリスク因子は特定されなかった.デュロキセチンによる悪心はセロトニンが関与しており,化学療法による悪心・嘔吐と同様に若年者でリスクが高いと考えられた.若年層のがん患者にはデュロキセチンを慎重に投与する必要がある. |
キーワード:デュロキセチン,有害事象,悪心,がん関連神経障害性疼痛(CNP),化学療法誘発性末梢神経障 |
短報
オピオイド誘発性便秘症へのナルデメジン開始時期と薬効の検討 |
---|
奥田 泰考、三瓶 祐貴、品田 誠、高倉 祐希、菅 留理、齋藤 賢宏 毛塚 ちひろ、星 ちはる、小林 直人、藤井 博文、須藤 俊明 |
[要旨] がん疼痛にオピオイド鎮痛薬が処方され,オピオイド誘発性便秘症に対しナルデメジンの処方を受けた患者を対象とし,ナルデメジン開始後の便性状および定期緩下関連薬数の変化について,後方視的に調査した.ナルデメジン開始後の便性状は,定期オピオイド鎮痛薬服薬期間の影響を受けず,緩下作用が認められた.定期オピオイド鎮痛薬導入後 14 日以内にナルデメジンを開始した場合,定期緩下関連薬数の減少が認められた. |
キーワード:がん疼痛,オピオイド誘発性便秘症,ナルデメジン |
国立病院機構関連施設における緩和ケアチーム担当薬剤師の 業務に対する満足度の要因分析 |
---|
中村 孝佑、形部 文寛、波多江 崇、八本 久仁子 |
[要旨]薬剤師が緩和ケアチームでの活動を継続していくためには何が必要か検討を行った.国立病院機構関連施設の緩和ケアチームの薬剤師を対象として業務と満足度の要因分析を行ったところ,「緩和ケアチームの診療内容のカルテへの記載」「非薬物療法に関する提案」「経済的な問題に配慮した薬物療法の提案」の関連が大きかった.従来の活動に加え,以上の業務に取り組むことが薬剤師の継続したチーム活動につながることが示唆された. |
キーワード:緩和ケアチーム,薬剤師,業務満足度 |