学会誌 VOL.12 No.4 December 2019
原著論文
薬剤師の緩和ケアチーム活動におけるアウトカム評価 |
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中川 左理、粕谷 香、竹澤 唯、西本 哲郎、石井 良平 江頭 佐都美、橋野 陽子、橋本 百世、岡本 禎晃 |
[要旨] 緩和ケアチームには身体科・精神科の医師,看護師,薬剤師が求められているが,各職種の働きについてのアウトカム調査は実施されていない.そこで,市立芦屋病院で,2016 年 4 月から 2018 年 8 月の間に緩和ケアチームが介入した患者を対象として,薬剤師が行った提案・介入内容・転帰について,レトロスペクティブに調査した.薬剤師による提案の採択率は 83.8%,採択された内容は,介入内容別では新規薬剤の提案 46.7% と約半数であり,症状別では疼痛 39.3%,消化器症状 15.9% などが多かった.採択された提案の実施後の有効率は 67.3% であった.薬物治療の効果が期待できない症状(浮腫 58.8%,倦怠感 35.7%)において,有効率が低い状況であった.薬剤師による提案の有効率は高かったが,効果判定が不能なものもあり,後方視的に重要な情報の収集が困難な場合があった.今後,チームの活動内容が明確に記録されるシステムを検討したい. |
キーワード:薬剤師,緩和ケアチーム,アウトカム評価 |
即効性オピオイドと短時間作用型オピオイドの同時処方の導入による安全性の評価 |
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伊藤 武志、梶山 徹、塚本 泰彦、倉橋 基尚、石村 愛、垣見 亮、濱口 良彦 |
[要旨] Rapid-onset opioid(ROO)と Short-acting opioid(SAO)の同時処方の安全性を検討した.持続痛が緩和された症例を対象に ROO と SAO の同時処方を行い,7 日間の副作用発現状況とレスキュー使用状況,使用前後の NRS 変化の前後比較を行った.42 例が登録されたが,12 例が不適格であり,30 例を解析対象とした.副作用発現は ROO 使用時 9 例(30%),SAO 使用時 13 例(43.3%)であった.ROO-SAO 同日使用症例は 16 例あり,副作用発現は 9 例(56.3%)であった.同一使用日の ROO 使用前後の NRS は 4.9 ± 1.9,2.3 ± 1.9(p < 0.05),同一使用日 SAO 使用前後の NRS は 4.1 ± 1.8,2.0 ± 1.7 であった(p < 0.05).ROO と SAO の同時併用によっても副作用の増強はなく,状況に応じ薬剤の使い分けができることが示唆された. |
キーワード:がん疼痛,オピオイド,レスキュー薬 |
スマートフォンのelectronic patient-reported outcomeのアプリケーションを 用いた薬剤師外来でのproactive symptom monitoringの初期報告 |
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藤堂 真紀、上田 重人、石川 詩帆、高橋 孝郎、近藤 奈美、松浦 一生 涌井 紀子、島田 祐樹、真壁 秀樹、大崎 昭彦、佐伯 俊昭 |
[要旨] 我々は,スマートフォンのアプリケーションを用いて,症状やバイタルサインを入力できる electronic patient-reported outcome(以下,ePRO)のアプリケーションと proactive symptom monitoring(以下,PSM)のシステムを開発し,臨床導入した.患者-医療者間で実践する PSM の初期経験を報告する.進行再発乳がん患者10 名を対象とし,副作用 14 項目を 5 段階で入力してもらい,担当薬剤師が医師と協働でアプリケーションを用いた PSM とより速やかな対応(以下,proactive response)を実施した.使用感についてのアンケート調査と QOL評価(EQ-5D-5L および VAS)を実施した.症状・バイタルサインがリアルタイムに可視化され,PSM およびproactive response が可能となり,副作用による治療中断は認めなかった.多くの患者から「使用しやすい」「治療に対する意欲が高まる」「安心感が得られる」と評価された.QOL 評価は,有意な変化を認めなかった.患者状態の可視化によって,PSM および proactive response が症状に対する早期対応を可能にし,副作用の重篤化回避につながった事例も経験した.その有用性については,今後さらなる検証が必要である. |
キーワード: electronic patient-reported outcome(ePRO),進行再発乳がん,薬剤師外来,proactive symptommonitoring, proactive response |