一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.10 No.2 June 2017

原著論文

オキシコドン徐放性製剤後発品と先発品のがん疼痛に対する前向き群内比較試験
中西 順子、片桐 将志、篠永 浩、原田 典和、加地 努、向井 栄治
[要旨] がん疼痛治療は薬物療法が主体であり,なかでもオキシコドン徐放性製剤の使用割合は高い.オキシコドン徐放性製剤のジェネリック医薬品が発売となり,臨床現場で先発品のオキシコンチンⓇ錠から変更されるようになったため,両者の有効性および副作用発現状況を比較検証するために前向き群内比較試験を実施した.オキシコンチンⓇ錠からオキシコドン徐放カプセル「テルモ」への変更予定者を対象として,変更前後 2 週間のベース薬服用直前の疼痛の程度,レスキュー薬服用状況および副作用発現状況を調査した.ベース薬服用直前の疼痛の程度およびレスキュー薬服用状況に有意差はなかった.また,副作用発現状況においても差はなかった.オキシコンチンⓇ錠からオキシコドン徐放カプセル「テルモ」に変更しても,問題なく疼痛コントロールできることが示唆された
キーワード: オキシコドン徐放性製剤,放出制御機構,ジェネリック医薬品,医療用麻薬,がん疼痛,NRS,前向き比較試験

 

カルボプラチン含有レジメンにおけるフラッシュ時の血管痛に対するブドウ糖液の有用性
永瀬 怜司、深澤 拓也、上原 望、藤森 律子、渡邉 豊治、清水 邦彦、相澤 雄介、菅野 浩
[要旨] 抗がん剤の血管外漏出予防に対しフラッシュが実践されている.カルボプラチン投与終了時に生理食塩液を用いた場合,血管痛を生じる事例が散見されるが,その血管痛発現状況,リスク因子および対策は明らかになっていない.カルボプラチンを含むレジメンを対象にフラッシュ時の血管痛発現状況を調査し,リスク因子および生理食塩液から 5% ブドウ糖液への変更の有用性を検討した.対象患者 133 名中,血管痛は 27 名(20.3%)に発現した.多変量解析の結果,60 歳未満(p = 0.026),パクリタキセルの併用(p < 0.0001)が血管痛発現に対する有意なリスク因子であった.さらに,5% ブドウ糖液へ変更したことで血管痛が有意に減少した(p < 0.001).本研究より,フラッシュ時の血管痛発現状況が明らかになったことから,リスク因子を有する患者に対して血管痛に関するモニタリングおよび対策の提案が必要であると考えられた.
キーワード: 血管痛,フラッシュ,ブドウ糖液,リスク因子,抗がん剤

 

Mohsペーストの調製方法に関する検討
長岡 匠、臼井 悟、川上 和宜、本田 雅巳
[要旨] Mohs ペーストはがんによる皮膚浸潤などの出血,感染による異臭,疼痛のコントロール,滲出液の軽減,腫瘍縮小の目的で使用されているが,調製に時間を要する院内製剤である.今回,自転・公転ミキサー NRE-250 を用いた調製方法を検討し,乳鉢で調製した Mohs ペーストと物性の相違を比較したので報告する.乳鉢および NRE-250 で Mohs ペーストを調製し,調製直後,1,3,6 日後の硬さおよび伸びを測定し,Student の t 検定を用いて比較した.NRE-250 および乳鉢で調製した Mohs ペーストは,伸びにおいて有意な差は認められなかったが,硬さでは調製直後(p = 0.0018),3 日後(p < 0.001),6 日後(p < 0.001)で有意な差が認められた.NRE-250を用いて調製すると,乳鉢で調製するより軟膏は硬くなった.
キーワード:Mohs ペースト,自転・公転ミキサー NRE-250,院内製剤

 

Gas Chromatography/Mass Spectrometry(GC/MS)を用いた使用済みデュロテップ®MTパッチ中フェンタニル定量分析法
藤田 詩織、堀 寧、田中 裕子、村山 佳那子、村越 真人
山田 徹、野本 優二、大谷 哲也、片柳 憲雄
[要旨] デュロテップ ®MT パッチは,がんまたは非がんの患者に広く用いられる 3 日間持続性のフェンタニル経皮吸収型製剤である.今回,簡易な抽出操作および Gas Chromatography/Mass Spectrometry(GC/MS)を用い,デュロテップ ®MT パッチ中のフェンタニルを定量分析する方法を確立した.フェンタニル抽出方法は,デュロテップ ®MT パッチを 40℃メタノール中で 2 時間振とうした.デュロテップ ®MT パッチ 2.1 mg,4.2 mg,8.4 mg, 12.6 mg,16.8 mg の全製剤規格のフェンタニルにおいて,平均回収率は 95.4 ~ 98.8%,C.V. 値は 0.76 ~ 2.88% と良好な結果であった.この方法を用い実臨床で 3 日間貼付したデュロテップ ®MT パッチを分析した結果,フェンタニルの放出率はすべての製剤規格において,113.6 ~ 147.6% と理論値より大きかった.また,放出量のバラツキも症例間で C.V. 値 3.57 ~ 33.2% と大きかった.この定量分析方法を用いることにより,デュロテップ ®MT パッ
チの適切な使用を評価する手段として寄与できると考える.
キーワード: GC/MS,フェンタニル定量分析,フェンタニル貼付剤,残存量測定

 

短報

薬学的介入からみた訪問薬剤管理指導業務のアウトカム評価
柴田 賢三、宇野 達也、山田 直也
[要旨] 本研究の目的は,薬学的介入内容を解析し,訪問薬剤管理指導業務の評価をすることである.2013 年 9 月から 2015 年 12 月までの解析を行った結果,薬剤師による能動的な介入が全体の 73.9% であり,それらの 95% 以上が処方に反映されていた.処方設計支援においては,医療用麻薬の投与に関する事例が全体の 49.1%にみられた.以上より,在宅医療受療患者への的確な薬物治療実施のためには,薬剤師の積極的な関わりが重要であることが示唆された.
キーワード: 訪問薬剤管理指導,在宅緩和ケア,薬学的介入,医療用麻薬