一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.8 No3. September 2015

原著論文

麻薬投与患者に対する薬学的管理支援ツールの開発と評価
魚住 秀親、水之江 峻介、内田 佳菜子、杉尾 悠、別府 千智
原 裕子、坂本 美由紀、兼重 晋、神村 英利
[要旨] がん性疼痛の緩和には医療用麻薬(以下,麻薬)が用いられることが多く,薬剤師の積極的な関与が求められている.そこで,麻薬が投与されているがん患者の薬剤管理指導に使用する業務支援ツールを開発した.本ツールを使用することにより,薬剤師がモニタリングする項目と服薬指導の項目が統一され,指導 1 件当たりの実施項目数が有意に増加した.また,薬剤師へのアンケートから,本ツールは有用で,指導漏れを防ぐことができ,効率的な記録作成ができるようになることが明らかとなった.これらの結果から,本ツールは,麻薬管理指導業務とその記録の質的向上をもたらすことが示唆された.
キーワード: がん性疼痛,医療用麻薬,服薬指導,薬学的管理支援ツール

 

保険薬局薬剤師を対象とした緩和ケアの服薬指導における実態調査と研修実施効果
土井 信幸、鴇田 沙織、清水 絵理、池田 陽子、吉崎 佳世、花田 明子、高井 友子
[要旨] 緩和ケアについては,医療従事者の疼痛治療に対する知識と経験不足,医学教育と卒後研修の不足,痛みの評価の未熟さ,医療用麻薬に対する偏見と誤解の解消が課題とされている.一方で,外来や在宅において保険薬局の薬剤師が緩和ケアにたずさわるケースは増加している.本稿では,保険薬局の薬剤師に対し年間 3 回(計 6時間)の緩和ケア研修を実施する前に行った事前アンケートの解析結果から,研修実施の効果を検討した.研修初年度は緩和ケアに対して「抵抗もなく積極的に行えている」と回答した薬剤師は 0 % であったが,次年度受講前は63.3 % と有意に増大した.患者教育の自己評価は,はじめて研修に参加する薬剤師と比較して,2 年連続で参加している薬剤師では有意にスコアが高かった.以上より,緩和ケア研修を受ける前は医療用麻薬や緩和ケアについて抵抗があった薬剤師の意識が研修を通じて変化し,薬剤師として自信をもって患者教育に取り組めたものと考える.
キーワード

 

がん患者の口腔乾燥に対するスプレー式保湿剤の開発と有用性評価
佐藤 淳也、昼沢 博美、大森 ハツエ、西野 弘子、佐々木 佳奈子
岡田 瑞樹、松本 直子、工藤 賢三
[要旨] 頭頸部腫瘍の化学放射線療法は,口腔粘膜炎や口腔乾燥が必発である.口腔乾燥を軽減するには,アズレン含嗽液や人工唾液,ジェル剤の使用のほか唾液腺マッサージなどが行われているが,効果,使用感,利便性,コストなどの点で継続的に使用されることは少ない.そこで,キシリトールおよびグリセリンを主成分としたスプレー式保湿剤を開発し,健常成人に対する使用感を評価した.さらに,製剤を患者に適用し,主観的および客観的口腔乾燥度,使用感のアンケートを行い評価した.口腔保湿スプレーは,不快な苦味や酸味が少なくバランスがよい製剤であるものと思われ,75%の患者が継続使用を希望した.また,治療経過中,客観的な口腔乾燥度の大きな悪化を認めなかった.以上より,今回開発した口腔保湿スプレーは,既存の含嗽液と相補的に使用することで口腔乾燥となる水分量の低下を防ぎ,かつ使用感や利便性,コストなどの点で継続的に受け入れられる製剤であると思われた.
キーワード:  口腔乾燥,口腔保湿スプレー,化学放射線療法,キシリトール,院内製剤

 

短報

オキシコドン徐放性製剤(オキシコンチン®)を減量中に退薬症候が出現した1例
高橋 有我、小屋 紘子、小林 剛
[要旨] オキシコンチンⓇ減量中に退薬症候が出現した.症例は 60 歳代女性.胃癌術後,肝転移,骨転移.腰痛,両下肢痛のためオキシコンチンⓇが開始され,720 mg/ 日まで増量ののち紹介となった.しかし,当院へ転院時は過量と考えられ,漸減を行った.約 1 カ月かけて 20 mg/ 日まで減量したところ,顔面発汗,下肢の振戦,イライラ感などの退薬症候が出現した.一般的な減量の目安より,さらに時間をかけて減量したほうが安全であるかもしれない.
キーワード: 退薬症候,オキシコドン