一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.8 No.1 March 2015

原著論文

病院実務実習および事前講義が医療用麻薬に関する知識習得に与える影響
横山 美里、土屋 翔子、小谷 悠、宮崎 雅之、後藤 綾、肥田 裕丈、椿井 朋、
毛利 彰宏、山田 清文、野田 幸裕
[要旨] 本研究では,病院実務実習を通して医療用麻薬に関する知識がどの程度習得できたかを調査した.平成22~25年度に名古屋大学医学部付属病院(名大病院)での実務実習および,その事前講義として平成23~25年度に医療用麻薬に関する講義を受けた名城大学薬学部生を対象とした.その結果,実習終了時の医療用麻薬に関する正答率は,開始時のそれと比較して有意に上昇した.医療用麻薬に関する事前講義が知識の定着に影響を与えるのか解析したところ,実務実習開始時では,事前講義を受講している学生の正答率は非受講学生のそれと比較して有意に高かったが,終了時には差が認められなかった.名大病院での実務実習は,医療用麻薬を理解するうえでより実践的に実施されており,事前講義を組み合わせることで,医療用麻薬の理解を効果的に習得できることが示唆された.
キーワード: 医療用麻薬,緩和ケア,薬学教育,実務実習,アンケート調査

 

在宅療養介護従事者によるオピオイド与薬介助の現状と問題点
西澤 さとみ、滝澤 康志、水野 裕紀子、下枝 貞彦、太田 伸、上條 浩司、古川 賢一
[要旨] 現在,日本では急速に高齢化が進み,在宅医療を支える介護従事者の役割が重要である.そこで,オピオイドが安全かつ適切に使用されることを目的に,介護従事者がオピオイドの与薬介助にどのように携わっているのか調査研究を実施した.その結果,経験年数の浅い介護従事者が,オピオイドの特性を十分に理解しないまま与薬介助をおこなっていることが明らかとなった.また,薬剤師とともにカンファレンスに出席している介護従事者のほうが,オピオイド関連講習会への参加に積極的であった.終末期がん患者がオピオイドを安全かつ適切に使用するためには,在宅療養に携わる介護従事者がオピオイドに対する知識を習得できるよう,薬剤師のさらなる啓発活動が必要である.
キーワード: オピオイド,与薬介助,在宅療養,介護従事者,終末期がん患者

 

化学療法システムの導入によるゾレドロン酸の適正使用の検討
高瀬 美咲枝、髙橋 美由喜、浦上 裕美、小谷 浩、柴田 和彦
[要旨] ビスホスホネート製剤は,腎機能に応じた用量での定期投与が望ましい.我々はすべての化学療法レジメンを電子カルテに登録し,レジメンごとに支持療法,投薬基準,投与順序を記載した計画書を作成している.化学療法オーダーは,医師がカルテ上でレジメン機能を用いて入力し,患者情報を入力した計画書を実施部署と薬剤部に提出して完結する.このシステムのゾレドロン酸投与への適用における適正使用に関して,システム導入前後で後方視的に比較した.対象は2010年1月から2年間にゾレドロン酸を開始した通院中の肺がん患者44名で,投与量,腎機能の推移,併用薬,顎骨壊死,低カルシウム血症の発現を調査した.適切な用量での開始は,システム導入前63%から導入後91%と改善傾向を認めた.適切な用量で開始された郡と不適切用量群との比較では,腎機能の低下に差はなかった.化学療法システムの導入は,少なくとも用量設定の見地から,ゾレドロン酸の適正使用に有用と考えられた.
キーワード: ゾレドロン酸,レジメン,腎機能障害,肺がん

 

非がん性慢性疼痛患者におけるオピオイド鎮痛薬からの切り替え投与によるフェンタニル貼付剤の有用性
杉浦 宗敏、長瀬 幸恵、黒田 誠一郎、岩瀬 哲、中島 由紀、中島 克佳、鈴木 洋史
[要旨] 非がん性慢性疼痛患者にフェンタニル貼付剤(FP)を12週の評価エンドポイントとして投与した時の,疼痛コントロールおよび副作用の発現状況について調査し,FPの有用性および安全性について評価した.対象患者35名のうち,12週投与が継続できたのは25名で,疼痛コントロールは改善またはやや改善が18名(NRS3(VAS30)以上改善1名,NRS1(VAS10)以上3(30)未満改善5名,NRS1(VAS10)未満改善12名),やや悪化が7名,(NRS1(VAS10)以内悪化7名)だった.副作用の発現状況は,嘔気5名,便秘2名,倦怠感・眠気2名で,いずれも軽度(CTCAE vol4.0 グレード1)だった.FP投与継続の有無との関連要因については,「ブプレノルフィンからの切り替えあり」「FPの増量あり」「悪心・嘔吐の発現あり」「倦怠感・眠気の発現あり」が,有意な関連要因と認められた(p<0.05).以上から,非がん性慢性疼痛患者の治療にFPの投与が有用であることが示された.
キーワード: 非がん性慢性疼痛,フェンタニル貼付剤,関連要因,ガイドライン

 

短報

パシーフ®カプセルの簡易懸濁法で在宅療養が可能となった嚥下障害患者に関する報告
川尻 尚子、高安 優香、高安 勤
[要旨] 嚥下障害があり,皮膚に痛みがあるためにフェンタニル貼付剤を使用できない肺がん患者の疼痛コントロールを目的とし,モルヒネ徐放性製剤パシーフ®カプセルの投与方法について検討した.パシーフ®カプセルを水に懸濁し内包される速放性粒と徐放性粒を分散させ,増粘剤を加えて患者に投与したところ安定した鎮痛効果が得られ,患者は自宅療養が可能となった.
キーワード: 疼痛コントロール,簡易懸濁法,パシーフ®カプセル,嚥下障害