学会誌 VOL.7 No.1 March 2014
総説
がん関連疲労に対する薬物療法 |
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吉澤 一巳,小藤 あずさ,小茂田 昌代 |
[要旨] 痛覚などとともに身体の不具合を警告する役割を担う(感覚の一つである)疲労は,がん患者において最も頻度の高い症状であり,放射線療法や抗がん剤によるがん治療中の患者では特に多いといわれている.このがん関連疲労は,「がんまたはがん治療に関連したつらさを伴う持続的,主観的な疲労感または消耗感」と定義される.また,一般的な疲労は,睡眠や安静といった休息によって疲労感を軽減し回復することが可能であるが,がん関連疲労ではこうした回復能力が低下し,疲労が慢性化しやすいのが特徴であり,対処困難な症状の一つといっても過言ではない.そこで本稿では,これまで明らかとなっているがん関連疲労の発生要因と,疲労改善が期待される薬剤に関する知見について概説する. |
キーワード: がん関連疲労,symptom cluster,薬物療法 |
原著論文
オピオイド注射プロトコールのシステム導入がオピオイドタイトレーションに与える影響 |
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中村 和行,万塩 裕之,米山 英二,祢宜田 和正,勝見 章男,嶋田 美佳,荻野 晃子 黒田 宏美,小池 委子,竹内 真実子,中村 從之,小野 芳孝,李 振雨 |
[要旨] オピオイド注射プロトコール(OIP)を使用することによるオピオイドタイトレーションへの影響を分析した.がん疼痛コントロールが不良のためにオピオイド注射によるタイトレーションが実施された症例を対象として,OIP を使用した症例(OIP 群)32 例,従来どおり医師の経験に基づいて治療した症例(非 OIP 群)29 例に分類して調査した.その結果,維持量への到達日数は,OIP 群中央値 4(2 ~ 7)日,非 OIP 群中央値 5(2 ~ 28)日と OIP 群で有意に短かった(p = 0.022).また,維持量への到達率は,3 日目(37.5% vs. 20.7%),4 日目(53.1% vs. 31.0%),5 日目(78.1% vs. 51.7%),6 日目(90.6% vs. 65.5%),7 日目(93.8% vs. 69.0%)と,OIP 群が有意に高値であった(p < 0.01).以上の結果から,OIP 使用により早期のタイトレーションが実現できる可能性が示唆された. |
キーワード:オピオイド,プロトコール,疼痛,タイトレーション,緩和ケア |
医看薬薬連携による外来がん患者サポート |
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立松 三千子,栗木 玲子,秦 毅司,室 圭 |
[要旨] 愛知県がんセンター中央病院(以下,当院)では,薬薬連携に医師・看護師の加わった医看薬薬連携(以下,連携)を立ち上げた.しかし,多職種の連携による臨床上の成果についてのエビデンスは乏しい.そこで,S-1の胃がん術後補助化学療法の完遂率,RP 値(S-1 の実総処方量 / 予定総投与量)に着目し,連携開始前後で比較検討した.その結果,完遂率は連携後のほうが高い傾向がみられ,RP 値,および RP 値 100% での完遂率は,連携後のほうが高かった.連携は,S-1 の服薬サポートに寄与する可能性が示唆された . |
キーワード: 多職種連携,保険薬局,外来がん患者,経口抗がん剤,S-1 |