一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.6 No.4 December 2013

総説

褥瘡の病態評価と薬物療法における薬剤師参加の意義
古田 勝経
[要旨] 褥瘡は疾患である.創の病態を評価し,病態に適した薬物療法を行うことが重要である.「床ずれ」とよばれていた時期もあり,疾患ではない印象を受けやすく,治らないという誤解も招いている.治らない理由は,病態を適切に評価せず,闇雲に薬剤や創傷被覆材を使用するためである.治らないという先入観は適切な治療までも排除してきたが,臨床現場では発症した褥瘡が目に見えるだけでなく,感染等により滲出液の増加や悪臭を放つなど,患者だけでなくケアする側が絶えず悪戦苦闘する状況が存在する.誤った認識は,病態さえも適切に評価させず,治らない褥瘡を生み出している.緩和医療領域でも例外ではなく,がん末期では発症しやすい.また,褥瘡の苦痛はがんとは異なり,治すことで除痛できる.褥瘡の薬物療法には,薬剤を取り扱う薬剤師の視点が重要であり,病態評価により薬剤の効果を引き上げ,治りやすい褥瘡に変える重要な役割が存在する.褥瘡の薬物療法に,薬剤師の参加は不可欠である.
キーワード: 褥瘡,病態指標,薬剤滞留,軟膏基剤,協働薬物治療管理

 

原著論文

諏訪地域保険薬局の医療用麻薬調剤の現状と問題点
網野 一真,米澤 亮,松田 舞子,林 美和子,小口 正義,登内 盛治,浜 至寛
跡部 治,佐々木 智美,五味 光太郎,藤森 和良
[要旨] がん患者における在宅医療をすすめていくうえで,麻薬調剤における保険薬局をとりまく現状と問題点を把握するために,諏訪薬剤師会にアンケート調査を行った.調査項目は,薬局の応需体制や取扱い麻薬の種類および調剤実績等 7 項目とした.39 薬局から回答を得た.麻薬小売業者免許については,95% の保険薬局が取得していたものの,休日対応,居宅配達等各種サービスについては対応が分かれた.また,麻薬の種類に関しては,処方箋応需枚数によりバラつきがあり,同一成分で複数成分量のあるものでは,成分量の低いものほど調剤実績が高く,成分量が高くなるにつれて低い傾向であった.休日対応については,麻薬は緊急性が高い場面も想定されるため,平日,休日を問わずの対応を要望するなど,検討を続けていく必要がある.また,麻薬調剤を行ううえで多くの保険薬局は,広範囲な剤形をそろえればそろえるほどデッドストックを抱えるリスクが高くなる可能性が示唆された.
キーワード: 在宅医療,保険薬局,麻薬調剤,調剤実績,デッドストック

 

短報

がん診療拠点病院の施設背景が緩和ケア診療加算件数に及ぼす影響
伊勢 雄也,森田 達也,片山 志郎,木澤 義之
がん診療拠点病院の施設背景が,緩和ケア診療加算件数に及ぼす影響について検討を行った.緩和ケア診療加算を算定していた施設(n = 118)を対象として,施設背景と算定件数との相関について解析を行ったところ,各職種の専従人数と緩和ケア診療加算との間に相関関係を認めた.以上より,緩和ケア診療加算件数を上昇させるためには,他の業務とは独立したかたちで各職種の医療スタッフを配置することが重要である可能性が示唆された.
キーワード:がん診療拠点病院,緩和ケアチーム,緩和ケア診療加算,専従人数