学会誌 VOL.6 No.3 September 2013
総説
脳卒中後疼痛に対する治療戦略の現状とモデル動物確立の必要性 |
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原田 慎一,中本 賀寿夫,徳山 尚吾 |
[要旨] 脳卒中をはじめとする脳血管疾患は,その高い発症率だけでなく,麻痺や記憶障害等の重い後遺症を誘発しやすい疾患であり,「寝たきり」になる疾患の第 1 位に位置する.脳卒中後の後遺症のひとつである脳卒中後疼痛(CPSP)は,神経障害性疼痛に分類され,従来の薬物治療に対して難治性を示す.現状においては,いずれの薬剤も,完全な疼痛の寛解は困難であり,患者の quality of life を著しく低下させる.そのため,CPSP の発症機序の解明,および新規治療法の開発が必須の課題となっている.しかしながら,これらの病態を評価できるモデル動物の確立はなされておらず,これらの課題解明に向けた試みの遂行が困難な状態にある.本総説では,CPSP治療に対する現状と問題点とともに,CPSP を模した動物モデルの確立とその必要性について概説する. |
キーワード: 神経障害性疼痛,脳卒中後疼痛,脳梗塞,マウスモデル |
わが国における薬剤師の緩和ケア教育の現状と問題点 |
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杉浦 宗敏 |
[要旨] 2007 年にがん対策基本法が施行され,がん患者に対する早期からの緩和ケアの導入が進められることになった.同時に,緩和ケアを担う医療従事者の養成は,がん診療拠点連携病院が中心となって行うことになった.薬学教育は 6 年制へ移行したが,緩和ケアに関する卒前教育は,大学間に大きな相違が存在していた.卒後臨床教育は,さまざまな団体や施設がスキルアップなどを目的としたプログラムを展開していた.医学教育においては,カリキュラムの標準化を進める検討を開始していた.医師および看護師における卒後臨床の教育は,日本緩和医療学会と各医療施設が連携をとりながら,体系的な教育システムの構築が進んでいた.薬剤師の緩和ケア教育においては,卒前教育の標準化とともに,卒後臨床教育について学会が中心となった体系的な教育システムの構築を進めることが,今後の課題と考えられた. |
キーワード: 緩和ケア,卒前教育,卒後臨床教育,PEPLE |
保険薬局における緩和ケアの現状とその教育 |
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飛鷹 範明,坪田 信三,古川 清,森 雅明,田中 亮裕末丸 克矢,宮内 芳郎 長櫓 巧,荒木 博陽 |
[要旨] 2007 年の「がん対策基本法」において,治療初期からの緩和ケアの実施や在宅緩和ケアの充実などが求められており,拠点病院のみならず,地域医療機関や保険薬局の役割が重要となっている.そして,病院薬剤師は,保険薬局薬剤師と連携を密にすることが必要である.これまでの報告から,在宅緩和ケアに関与している保険薬局は 8.9% とされており,この要因として,保険薬局により麻薬処方せんの応需に格差があること,麻薬の在庫管理上の問題,緩和ケアに関する知識や経験不足,情報共有の不足,などが挙げられる.本稿では,病院薬剤師からみた保険薬局における緩和ケアの現状について紹介するとともに,緩和ケア教育の有用性についてまとめた. |
キーワード: 緩和ケア,保険薬局,実態調査,教育 |