学会誌 VOL.6 No.2 June 2013
総説
褥瘡および慢性皮膚潰瘍の治療のための外用ヨウ素製剤 |
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野田 康弘 |
[要旨] 外用ヨウ素製剤は,褥瘡および慢性皮膚潰瘍の治療において,滲出液・壊死組織・感染の制御の目的で広く用いられている.最初にポビドンヨード・シュガーが開発され,吸水性を高める目的で,カデキソマー・ヨウ素軟膏,ヨウ素軟膏が開発された.基剤には吸水性の製剤添加物が使用され,有効成分としてヨウ素を含み,これらは,褥瘡のガイドライン中で同効薬として挙げられている.しかし,試験法を統一して,おのおのの薬剤を評価すると,吸水性およびヨウ素の放出性が異なることが明らかになった.特に,吸水性については,能動的吸水によって創面を乾燥させる作用が期待されるものと,受動的吸水によって創面に湿潤を保つ作用が期待されるものに区別される.また,ヨウ素には,殺菌作用だけでなく,低濃度で細菌類の細胞機能を調整する働きがある.ヨウ素製剤で創傷が改善されることも,確かのようである.ヨウ素製剤が創傷治癒過程に働く可能性も考えられる. |
キーワード: 褥瘡,ヨウ素製剤,吸水性,ヨウ素の放出性 |
原著論文
保険薬局における医療用麻薬の情報把握に対する現状 |
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藤堂 延昭,仲村 祐太朗,射場 茂樹,百々 史和,友田 浩美,大石 学 木下 和彦,春山 勇,為近 太郎,山口 圭太,高瀬 久光 |
[要旨] 服薬指導は適正使用や管理方法などを説明する情報提供であるが,保険薬局では,患者情報が少ない状況で対応に当たらざるを得ない.昨今,薬局薬剤師が緩和医療と深く関わることが肝要であり,高齢化社会における在宅医療の展開では,その薬剤師の役割について十分に検討する必要があった.今回,医療用麻薬を対象として,医療機関と患者からの情報量に着目し,情報の把握状況について在宅群(33 名)と薬局窓口を対象とした外来群(12 名)に分類し,検討を行った.その結果,外来群が在宅群と比較して,化学療法の有無・がん原発巣・調査最終日の転帰などの点で情報入手が困難であることが判明した.この現状を踏まえて,薬局薬剤師は,医療用麻薬の適正使用についての情報を共有するため,医療機関との連携を強化する必要性が示唆された. |
キーワード: 保険薬局,在宅医療,患者情報,医療用麻薬 |
短報
リファンピシン服用下でのオキシコドン血中濃度測定を行った1例 |
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柴原 弘明,井上 健,植松 夏子,今井 絵理,戸倉 由美子,西村 大作,吉田 厚志 |
[要旨] リファンピシン服用患者のオキシコドン血中濃度を測定した.血中濃度はオキシコドン徐放錠 20 mg 投与 2 時間後で 5.52 ng/ml,次回投与直前・12 時間値では 3.40 ng/ml であった.薬物動態シミュレーションプログラムを用いた他施設での算出では,同量投与 2 時間値と 12 時間値は各 43 ng/ml と 20 ng/ml で,自験例では約 1/7 にすぎない.海外の先行研究では,リファンピシン併用下のオキシコドン徐放錠の AUC は約 1/7 に低下しており,今回の血中オキシコドン濃度の低下とほぼ同等である.本研究から,リファンピシン投与中の患者ではオキシコドン血中濃度が低いことが示され,オキシコドンの鎮痛効果が十分得られない可能性があり,注意を要する. |
キーワード: リファンピシン,オキシコドン,血中濃度 |