学会誌 VOL.5 No.3 September 2012
原著論文
薬学部実務実習生の緩和ケアに関する知識習得状況、および緩和ケア実習の評価 |
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輿石 徹,奥山 清 |
[要旨] 薬学部実務実習生に対する緩和ケア教育の評価に関する報告は,現在のところほとんどない.本研究は,実務実習薬学生に対し,緩和ケア領域における知識習得状況の調査,ならびに緩和ケア実習プログラムを評価することを目的とした.薬学部実務実習生に対して,実習当初に Palliative Care Knowledge Test を実施した(n = 16).3 週間の緩和ケア実習プログラムを実施後,再度同テストを実施した.その結果,実習プログラム開始前には,呼吸器症状,消化器症状に関する分野で正答率が低かった.実習終了後に正答率の有意な上昇が認められたのは,疼痛(p < 0.05),消化器症状(p < 0.01)の分野,総合得点(p < 0.01)であった.緩和ケアの知識のうち,実習前に知識が不十分である分野が認められた.また,当院での緩和ケア実習プログラムは,緩和ケアの知識習得に有用であると考えられた. |
キーワード: 緩和ケア実習,Palliative Care Knowledge Test,実務実習 |
一保険薬局が直面した麻薬在庫管理上の問題とその要因からみえる緩和ケア普及の隘路 |
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稲葉 一郎,世良田 真理,榎田 泰介,椎屋 久生,伊集 智英,濱田 由子 玉飼 博之,天方 奉子,石塚 洋一,入倉 充,入江 徹美 |
[要旨] 緩和ケアの普及に伴い,保険薬局は医療用麻薬の円滑な供給を求められるようになった.本研究は,麻薬処方せん応需が月平均 10 枚以下で,集中率 70% 以下の一保険薬局の開設当初から 3 年にわたる麻薬取り扱いの状況を調査し,特に在庫管理上の問題と,その発生要因からみえる緩和ケア普及の足かせについて考察した.2006 年4 月から 2009 年 7 月までに応需した麻薬処方せん 461 枚を対象とし,麻薬の使用状況や在庫金額などについて調査を行った.調査期間中,麻薬の不動在庫は増え,2009 年 7 月時点で 12 カ月以上の不動在庫は 7 品目 10 規格となった.その主な要因は,処方継続期間が短いことや,患者の病態変化および医療機関の事情による予測できない処方停止,改良製剤の発売等であった.返品や小売業者間譲渡・譲受が容易でないことも,大きな要因である.今後,小売業者間譲渡・譲受の条件が見直されれば,保険薬局が適正な在庫管理のもとで,主体性をもって緩和医療に取り組むことができると考えられる. |
キーワード: 緩和ケア,医療用麻薬,保険薬局,在庫管理 |
短報
プロクロルペラジンにより横紋筋融解症を来した1例 |
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紀平 裕美,打保 裕子,太田垣 加奈子,坂下 明大,久米 学,平野 剛 西村 善博,平井 みどり |
[要旨] 医療用麻薬導入時の副作用である嘔気・嘔吐を予防する目的で,プロクロルペラジン(PCZ)を併用することがある.今回,われわれは PCZ 服用 5 日後に横紋筋融解症を疑う症状を発症したため本剤の服用を中止,その後回復した症例について報告する.PCZ の重篤な副作用のひとつに悪性症候群があり,重症例の場合,横紋筋融解症を発症することがある.PCZ 服用患者においては,既知の副作用に加え,横紋筋融解症発症のリスクに十分注意する必要がある. |
キーワード: プロクロルペラジン,横紋筋融解症,医療用麻薬 |