一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.3 No.1 May 2010

原著論文

新規悪心嘔吐スケールを用いたがん化学療法施行患者の栄養指標に対する有用性の検討
滝澤 康志,下枝 貞彦,太田 伸,中澤 一純
[要旨] がん化学療法施行に伴う患者の栄養状態が,治療レジメンによって生じる悪心嘔吐の程度により,患者の栄養指標変化とどのような関連性があるのか検討することを目的に,独自の評価スケール ( 悪心嘔吐点数 ) を作成し,栄養指数との関連を検討した.その結果,がん化学療法施行に伴い変動が認められた栄養指数は血清アルブミン数 (p = 0.027) とヘモグロビン数(p = 0.001)と body mass index(以下 BMI)(p = 0.039)であった.そこで,栄養指標と悪心嘔吐点数との関連性を検討したところ,ヘモグロビン数との間に有意な相関が認められた(p= 0.036).以上より,悪心嘔吐点数を用いることにより,がん化学療法施行に伴う患者の栄養状態の悪化を予測できる可能性が示唆された.
キーワード: がん化学療法,ヘモグロビン,body mass index,血清アルブミン,悪心嘔吐点数

 

緩和医療における感染症治療による症状緩和効果ならびに原疾患の経過との関連性の検討
安田 俊太郎,鈴木 正寛,堀 夏樹
[要旨] 緩和医療を受ける進行癌患者において,感染症に伴うさまざまな症状は QOL を著しく損なう原因となるが,抗菌薬治療によりどの程度症状緩和が可能かは不確かである.本研究では,緩和ケア病棟における 47 症例,計 79 件の感染症と,関連する諸症状の抗菌薬投与前後の変化を STAS-J 症状版に準じて遡及的に調査した.また,発症後の予後を以て層別化し,各症状の改善度の相違を検討した.感染症の発症時期は 44.3%が死亡直前 14 日以内に集中し,生存期間中央値は 18 日であった.抗菌薬治療は,感染症の種別により異なるものの,発熱など諸症状の改善に一定の寄与を示した.しかし,いずれの症状も生存期間 14 日以内の群では統計学的に有意な改善は認められず,倦怠感やせん妄はむしろ増悪傾向であった.抗菌薬治療は感染症に伴う諸症状の緩和に重要な役割を果たすが,その程度に関しては期待される生命予後が予測因子となる可能性が示唆された.
キーワード: 緩和医療,感染症,抗菌薬,症状緩和,予後

 

在宅がん患者の注射剤調剤に関する実態調査と薬・薬連携に向けての取り組み
田中 美和,林 和枝,三浦 篤史,依田 一美,岩下 誠,井出 英樹
[要旨] 近年,がんの薬物治療や緩和ケアは入院から外来や在宅へ移行してきている.診療所・クリニックで診療を受けながら在宅中心静脈栄養を施行する場合には,保険薬局での調剤が必要と思われるが,現状では受け入れられないことが多い.そこで今回,注射剤調剤に対する保険薬局の実態,意識を知るためにアンケート調査を行った.佐久地域で注射剤調剤が可能な保険薬局は 0 件であった.その理由として,設備の問題や,注射剤調剤に関する知識・経験がない点を挙げる施設が多かった.病院薬剤師に対しては,勉強会や病院での実技実習等の支援を求める声が多かった.アンケートを契機に,薬剤師会内に在宅推進委員会が発足した.注射剤調剤においても,保険薬局薬剤師と病院薬剤師が,地域で情報を共有して薬・薬連携を強化し,がん患者の在宅での療養をサポートできる体制を構築していくことが必要である.
キーワード: 在宅中心静脈栄養,在宅医療,注射剤調剤,薬・薬連携,アンケート調査

 

終末期在宅訪問がん患者に対するオピオイド投与の現状と問題点
滝澤 康志,下枝 貞彦,西澤 さとみ,太田 伸
[要旨] 終末期在宅訪問がん患者に対するオピオイド投与時の問題点を明らかにし,病院薬剤師による在宅訪問薬剤管理指導を改善することを目的に,オピオイド使用時のコンプライアンス,オピオイドローテーション等について調査研究を実施した.その結果,オピオイドが投与されている終末期がん患者のオピオイドローテーションの理由に在宅訪問がん患者および入院がん患者間で違いがあり(p =0.000),在宅で良好なコンプライアンスを確保するためには,介護者にとって扱いやすく,負担にならない薬剤を選択することが重要であることが明らかとなった.また,終末期がん患者死亡時のオピオイド使用量が,在宅訪問患者および入院患者間で有意な差が認められなかったことは(p =0.573),終末期在宅訪問がん患者の治療を専門に行っていない医療施設でも,薬剤師が介入することで安全にオピオイドを使用し良好な疼痛コントロールが維持できることを示唆していると考えられた.
キーワード: オピオイド,オピオイドローテーション,終末期在宅訪問がん患者,介護者,病院薬剤師による在宅訪問薬剤管理指導