学会誌 VOL.2 No.1 March 2009
総説
| 糖尿病態におけるオピオイド神経系の機能変化 |
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| 大澤 匡弘、宮田 茂雄、亀井 淳三 |
| ［要旨］ 糖尿病は，種々の薬物の感受性に影響を与えることが知られている．特に，糖尿病時において，モルヒネやフェンタニルの鎮痛効果は減弱しているが，オキシコドンによる効力は変化せず，薬物ごとに受ける影響が異なっていることが明らかにされている．これらオピオイドによる鎮痛作用の変化には，持続する高血糖状態により引き起こされる神経系の機能変化が原因であることが示唆されている．特に，持続的な高血糖によるプロテインキナーゼ C の活性上昇や細胞内カルシウム量の変動は，オピオイドによる鎮痛作用の変化の原因の一部であることが明らかにされている．これらのことは，代謝異常を伴う患者において，オピオイド神経系をはじめとする生体内における疼痛制御系が変化していることを示唆しており，代謝異常を伴う患者の疼痛緩和には，それぞれの状態を考慮した治療戦略を立てることが肝要であるといえる． |
| キーワード： 糖尿病，オピオイド，疼痛緩和，薬物感受性 |
原著論文
| Analysis of Efficacy,Safety,and Quantity of Rescue Doses of Morphine Sulfate Formulations for Cancer Pain |
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| Hisamitsu TAKASE, Takayuki SUETA, Takafumi YAMANO, Toshifumi SAKATA, Takashi NAKAGAWA |
| Abstract: Currently, controlled-release (CR) formulations of morphine sulfate taken once a day (q.d.) are commercially available as P-GUARDTM tablets (P-tab) and KADIANTM capsules (K-cap). However, the efficacy and safety of these drugs have not been compared yet. Therefore, we analyzed the efficacy, and quantity of rescue doses of morphine sulfate formulations for pain in head and neck cancer. The study period was between November 2005 and July 2007. We performed a crossover study on morphine dosage for 7 days in the first phase using P-tab and K-cap. The end-points were pain at rest, pain on moving, nausea, constipation, sleepiness, rescue dose, and patient/doctor evaluation. Our study subjects were divided into P-tab precedence group (10 cases) and K-cap precedence group (9 cases). There were no significant inter-group differences in the administration order effect, and administration order did not influence drug evaluation. There was no significant difference in the time effect; i.e., change before-after drug administration. Furthermore, there were no significant differences in all items of the drug effect, either. In other words, the CR morphine sulfate formulations were equal in our crossover study between groups, and consequently no significant differences were noticed in the patient/doctor evaluation. Therefore, we concluded that the opioid switch in an equi-analgesic dose of CR morphine sulfate formulations is possible. |
| Key words： controlled-release (CR) formulations, morphine sulfate, efficacy, safety, rescue dose |
| オピオイドローテーションにおける薬剤経済学的検討 |
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| 佐藤 淳也，照井 一史，佐藤 哲観，蛯名 正子，菊地 淳宏，浅利 三和子 野戸 結花，三上 恵理，工藤 恵子，早狩 誠 |
| ［要旨］ 癌性疼痛に対して各種オピオイド製剤が使用可能であるが，その薬剤選択において薬剤経済性に着目した検討は乏しい．今回，製剤開発時の臨床試験データから客観的評価が可能な，visual analog scale（VAS）あるいは疼痛強度，有痛時間と費用について切り替えによる変化率を指標に，徐放性オキシコドンおよびモルヒネ製剤，フェンタニル貼付剤を基準薬（徐放性硫酸モルヒネ錠）から切り替えた場合の費用対効果を検討した．その結果，オキシコンチン（効果減～不変・費用減），カディアン（効果，費用とも不変），ピーガード（効果不変～増・費用不変），パシーフ（効果微減～微増・費用不変），MS ツワイスロン（効果微増・費用減），モルペス（効果不変・費用減），デュロテップ（効果減～増・費用減）という位置付けになった．オピオイドローテーションにおいては，効果と副作用を考慮した薬剤選択が必要である．今回の検討は効果についてのみの評価であるが，切り替えによる副作用が同等である患者には今回の薬剤経済学的評価は有用な情報である． |
| キーワード： オピオイドローテーション，モルヒネ，オキシコドン，フェンタニル貼付剤，医療経済性 |
短報
| がん性疼痛患者に対するオピオイド回診の評価と今度の課題 |
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| 森 英樹，平井 淳子，喜多嶋 拓士，石橋 真実，谷口 里枝，竹原 まゆみ，家守 元男 渡辺 洋一 |
| ［要旨］ 当院の緩和ケアチーム（以下，PCT）はコンサルテーション型の活動を行っているが，PCT に依頼のない入院患者の中にも，緩和ケアの必要なケースが存在すると考えられる．そこで，オピオイド使用中のがん性疼痛患者のカルテ回診（以下，オピオイド回診）を行い，対象となった 86 症例の分析を行った．その結果 PCT によるオピオイド回診は，がん性疼痛の改善，副作用の把握などに有効であり，患者の QOL を改善する可能性が示唆された． |
| キーワード： がん性疼痛，オピオイド回診，緩和ケアチーム |
| 埼玉県立がんセンターにおける緩和ケアチームの活動とその評価 |
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| 中村 益美，余宮 きのみ，清水 麻美子，高津 美和，中山 季昭，細谷 和良 |
| ［要旨］ 埼玉県立がんセンターにおいては，2007 年に緩和ケアチーム（PCT）が発足した．そこでチーム発足後の 2007 年 5 月から 11 月までの間に PCT が介入した 98 名の患者について，服用薬剤や症状評価の調査を行った．介入による患者の苦痛症状の変化は，Japanese Version of Support Team Assessment Schedule（以下，STAS-J）を用いて比較検討した．結果，介入時平均は 5.3，介入 1 週間後平均は 2.6 で，有意に症状の緩和が得られ，PCT活動が有用であることが明らかとなった． |
| キーワード： 緩和ケア，チーム医療，服薬指導 |