一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.19 No.2 June 2026

原著論文

オピオイド注射セットオーダーの利用がオピオイド適正使用に及ぼす影響
鈴木宣雄・木村美智男・神田友江・大塚崇史・川口智里・今村江美・中島治典・宇佐美英績
[要旨] オピオイド注射セットオーダーの利用がオピオイド適正使用に及ぼす影響を調査した.対象は,2022年9月から2024年8月にがん疼痛によりオピオイド注射を使用した入院患者157例とし,セットオーダー使用群(90例)と未使用群(67例)に分類した.医師からの指示における各項目の記載割合を比較したところ,レスキュー量が100 %と97.0 %,レスキュー間隔が100 %と88.1 %,増量指示が97.8 %と68.7 %,増量前確認事項が97.8 %と28.4 %であった.レスキュー間隔,増量指示,増量前確認事項はいずれも使用群で有意に高値を示した(p<0.001).オピオイドナイーブ症例では,未使用群8例で添付文書上の推奨初期投与量より過量であった.これらの結果から,セットオーダーは処方の標準化を促進し,安全で適正なオピオイド使用を支援することが示唆された.
キーワード :オピオイド注射セットオーダー, 適正使用, がん疼痛, オピオイド系鎮痛剤

 

薬局薬剤師の多職種連携が終末期がん患者の自宅看取りの実施状況に及ぼす影響
髙橋伸夫・田口真穂・飛鷹範明・長谷圭悟・内田まやこ・髙瀬久光
[要旨] 本研究の目的は,終末期がん患者に対する薬局薬剤師の多職種連携が,自宅看取りの実施に及ぼす影響を明らかにすることである.対象は,層化抽出により選定した二次医療圏内の地域薬剤師会に所属する薬局とした. 調査では,薬剤師の在宅医療経験年数,多職種連携に関する評価,薬局の無菌調製設備の有無などを調査した.有効回答は313 施設であり,自宅看取り経験を有する薬局は16.3%であった.自宅看取りを実施している薬局では, 多職種連携の評価が有意に高く,在宅医療経験年数が長い薬剤師ほど連携スコアも高い傾向が見られた.さらにロジスティック回帰分析の結果により,自宅看取りの実施には,無菌調製設備の整備,緩和ケアの実施,薬剤師の多職種連携能力,在宅医療の十分な経験年数が関連していることが示された.自宅看取りの実施には薬局の機能だけでなく,薬剤師の能力も重要であることが示唆された.
キーワード :在宅医療,緩和ケア,終末期,多職種連携,薬局機能

 

小児緩和ケアに関する薬剤師の意識とオピオイド使用に関する全国アンケート調査
船渡三結・中村和代・近藤匡慶・髙橋伸夫・飛鷹範明・宮里明芽・国分秀也
[要旨] 令和6年度診療報酬改定にて小児緩和ケア診療加算が新設され,成人同様に小児への適切な緩和ケア提供が求められる.しかし,小児緩和ケアに関するエビデンスは乏しく実態把握と知見の蓄積が急務である.本研究 では小児緩和ケアに関する薬剤師の意識および小児がん患者におけるオピオイド使用の実態を明らかにすることを目的とし,Web 方式によるアンケート調査を実施した.回答者168 名のうち小児緩和ケアの経験を有する薬剤師は 42 名(26%)であった.使用される強オピオイドはモルヒネ製剤が最も多く, 副作用対策では酸化マグネシウムやメトクロプラミドの使用頻度が高かった.薬物代謝の発達段階の違いなどの小児特有の要因や,小児における使用実績の蓄積状況により, オピオイドの薬剤選択や副作用対策が成人と異なる可能性が示唆された.また小児緩和ケアの経験の有無にかかわらず,多くの薬剤師が本領域における知識や情報の不足を感じていることが明らかとなった.
キーワード :小児緩和ケア,小児がん患者,オピオイド

短報

ハロペリドールおよびミダゾラム併用により発症した薬剤性低体温症に対し薬剤師が介入した1例
神原 諒・林 詩乃・山川拓也・早川太朗
[要旨]経口摂取困難な高齢患者のせん妄に対しハロペリドールとミダゾラムを併用したところ,持続的な体温低下を認め,薬剤性低体温症と考えられた.薬剤師が原因薬剤の中止と代替薬への変更を提案し体温は速やかに回復した.薬剤による有害事象を早期に認識し治療に寄与した症例として報告する.
キーワード:薬剤性低体温症,抗精神病薬,せん妄