一般社団法人 日本緩和医療薬学会

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学会誌 VOL.17 No.2 June 2024

原著論文

腎機能低下時におけるヒドロモルフォンへのオピオイドスイッチングによる有効性・安全性の評価
加野桂佑・下城正明・押本直子
[要旨] 今回我々は腎機能低下等によりオピオイドの使用が制限される場面において,ヒドロモルフォンの有効性・安全性等に違いがあるかをヒドロモルフォンへのオピオイドスイッチングによる NRS(Numerical rating scale),レスキュー回数,排便回数,睡眠,呼吸数,SpO2 の変化から調査・検討を行った.ヒドロモルフォン処方患者 13 例には腎機能低下があり,そのうちヒドロモルフォンへのスイッチングを行った 11 例では前一週間と後一週間の NRS,レスキュー回数,SpO2 で有意な差がみられたが排便回数,睡眠,呼吸数に差はみられなかった.ヒドロモルフォンへのオピオイドスイッチングは腎機機能低下患者において有効性・安全性が確認でき有用な選択肢の一つであると考えられる.ヒドロモルフォンは日本では 2017 年の認可からまだ期間が短く使用実績も十分でなく症例数も少ないため,ヒドロモルフォンの動向を注視していくことは重要である.
キーワード: ヒドロモルフォン,モルヒネ,オピオイドスイッチング

短  報

腎後性腎不全が契機となりオキシコドンによるミオクローヌスを発症した直腸癌の一例
佐藤 到・黒坂夏美・上野聡一郎・中島日出夫
[要旨] 直腸癌による骨盤内神経叢浸潤によるがん疼痛に対しオキシコドン(OXC)持続皮下注を開始した.開始後 20 日目に眠気,22 日目にミオクローヌスを発症,24 日に腎後性腎不全に対し腎瘻造設術を行った.OXC 減量,腎機能改善後,ミオクローヌスは消失しオピオイド誘発性ミオクローヌスと考えた.腎機能障害を有するモルヒネ,ヒドロモルフォンを投与するとモルヒネ-3-グルクロニド(M3G),ヒドロモルフォン-3-グルクロニド(H3G)が蓄積しミオクローヌスが発症することは知られているがオキシコドンについては報告が少なく貴重な症例であると思われたため報告する.
キーワード:オキシコドン,腎不全, オピオイド誘発性ミオクローヌス

 

在宅移行時のPatient-Controlled Analgesiaポンプ使用の課題 ― 緩和医療薬学会年会ワークショップアンケートより ─
山田正実・村井 扶・三浦篤史・三羽尚子・鳥井小莉・地丸裕美・高橋一栄
[要旨] オピオイド持続注射が導入されたがん疼痛患者は,在宅移行後も Patient-Controlled Analgesia(PCA) ポンプの継続が望ましいが,様々な課題が存在し PCA ポンプは十分に普及していない. 2023 年の緩和医療薬学会年会に参加した保険薬局・病院薬剤師を対象にした PCA ポンプ使用に関するアンケートで「PCA ポンプについて知識がない」と多くの薬剤師が回答した.この課題を解決するため保険薬局・病院薬剤師が合同で PCA ポンプセミナーを開催する必要があると考えられる.
キーワード:PCA ポンプ,がん疼痛,在宅緩和ケア

 

がん終末期ポリファーマシー状態からの向精神薬の急激な断薬により悪性症候群を発症した1例
殿垣聖子・細川 舞・相原直彦
[要旨] がん終末期で服薬困難となり,ポリファーマシーからの急激な断薬が誘因と考えられる悪性症候群の症例を経験した.ダントロレン投与にて改善を認めた.終末期のポリファーマシーには急激な断薬による致死的な副作用を招く可能性があり,注意が必要であった.
キーワード:悪性症候群,断薬,がん終末期