年会案内・報告

第8回年会報告

第8回日本緩和医療薬学会年会を開催して

平成26年10月3日(金)〜5日(日)にかけて、愛媛県県民文化会館(ひめぎんホール)・愛媛看護研修センター・愛媛県身体障害者研修センターにて「第8回日本緩和医療薬学会年会」を開催致しました。最終日午後には台風18号(5日には鹿児島県奄美地方に接近、その後北東方向に進み、6日朝8時頃に静岡県浜松市上陸)の影響で雲行きが怪しくなり、交通網がどうなるか心配しながらのフィナーレでしたが、なんとか無事に終了することができました。最終的には2,200名ほどの先生方にご参加いただきました。ご参加頂いた皆様方には、学会を盛り上げていただきました事に心から感謝し、御礼申し上げます。

「日本人の2人に1人はがんに罹患し、3人に1人はがんで死亡する時代」ということが報道され、病院でもがん患者が大多数を占める状況になっています。緩和医療分野についても2008年度の診療報酬改定で緩和ケアチームに対する算定がなされ、罹患から退院後の在宅医療に至るまでがん患者に対する痛みの緩和対策は医療従事者にとっての重要な取り組みとなっています。このような状況下、第6回の本学会では平井先生が「緩和医療のブレイクスルー 〜行動する薬剤師に向けて〜」をテーマに、ただ座って勉強するだけの時代は終わったということをアピールされました。第7回では鈴木順子先生が「今「絆」でつくる地域の緩和・・・薬局が担う地域の緩和医療・・・」で、保険薬局薬剤師に強いメッセージを与えてくださいました。今回のテーマは「輪(つながり)〜いま、緩和医療にできること〜」としましたが、これには「日本において益々高まる緩和医療の重要性を鑑み、保険薬局薬剤師、病院薬剤師、薬学研究者の連携強化を図り、緩和医療における薬物療法の推進と充実、さらに大学での教育研究と企業での開発・学術研究の進歩発展を図り、社会に貢献することを目的とする」という本学会の理念に沿った活動を再認識しましょうというメッセージも込めたつもりです。基礎、臨床、製薬会社、大学の4つの輪がつながった緩和医療の重要性を強調したいと考えて、このようなメインテーマを設定しました。シンポジウムも基礎から臨床まで幅広いテーマになった様に思います。少し振り返ってみますと、特別講演では基礎、基礎的要因を含んだ臨床、そして特別企画ではがん患者さんの発表という形に致しました。最前線の素晴らしいご発表に感激いたしましたが、演者のお一人である井上和秀先生(九州大学大学院薬学研究院 教授)は平成26年度の紫綬褒章を受章されたという素晴らしい知らせが12月に飛び込んで来ました。ATP受容体やグリア細胞が関与する痛みのメカニズムを世界的に牽引されてきたことが評価されたと心からお慶び申し上げます。がん患者のご家族が発表した市民公開講座では医師、病院薬剤師、保険薬局薬剤師、看護師とともに、「がんと向き合う人のために〜『痛い』を伝えるとき〜」というテーマで、患者はどうすれば「痛い」をうまく伝えられるか、医療者はどうすれば汲み取れるかを考えました。この講座では、併せてがん患者、あるいはそのご家族に俳句でお気持ちを詠んでいただき、優秀作品を表彰いたしましたが、心にじーんと来る作品ばかりで、その解説をされる先生方のお言葉にさらに目頭が熱くなりました。患者さんとの連携にも少し貢献できたのではないかと思いました。

発表内容は、一般演題が319演題(口演:87演題、ポスター:232演題)、シンポジウムが今回のメインテーマであるつながりを意識した内容を含め、24セッションで、基礎系や臨床系の話題、薬・薬連携の取り組みなど幅広い内容になりました。多くの参加者により熱い議論が繰り広げられました。また、論文の書き方の解説や、専門薬剤師の認定取得に向けたシンポジウムを開いたことも今回の特徴の1つです。毎年開催しているワークショップでは「緩和医療に求められる薬物療法の介入と副作用対策〜はじめの一歩」をテーマに、定員制の参加型ワークショップを行いましたが、大変な熱気で参加者の先生方の意欲を感じました。また、教育セミナー2題、ランチョンセミナー11題、坊っちゃんセミナーと題するモーニングセミナー3題にも多くの先生方の参加をいただきました。最終日には、厳正かつ公平な審査の結果、口頭発表およびポスター発表の中から4題が、年会優秀発表賞として選出され、閉会式にて表彰が行われました。

以上、本年会を無事に終えることができましたのも、ひとえに年会にご参加頂きました多くの皆様方をはじめ、年会開催に際して企画・運営にご尽力頂きました委員各位、協賛を頂きました各企業、その他ご支援頂きました多くの皆様方のお陰と、衷心から御礼申し上げます。年々大きくなる本学会が益々発展されますことを記念致しております。

 

 

愛媛大学医学部附属病院 教授・薬剤部長
第8回日本緩和医療薬学会年会長
荒木 博陽

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