年会案内・報告

第5回年会報告

第5回日本緩和医療薬学会年会を終えて

年会報告に先立ちまして、宮城県三陸沖を震源とした「東日本大震災」で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に深くお悔やみを申し上げます。また、被災地にてご尽力されている方々に敬意を表するとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

未曾有の大震災を目の当たりにし、開催の延期あるいは中止を検討した時期もありましたが、「我が国における緩和医療の重要性を鑑み、保険薬局薬剤師(薬)、病院薬剤師(薬)ならびに薬学研究者(学)間の連携(薬・薬・学連携)の強化を図り、緩和医療における薬物療法の推進と大学や企業での教育研究の発展に寄与する」との学会理念のもと、非常時であるが故の年会開催の重要性を考え、平成23年9月24日(土)ならびに25日(日)の両日、幕張メッセ(千葉市)にて「第5回日本緩和医療薬学会年会」を開催致しました。当日は天候にも恵まれ、病院薬剤師、保険薬局薬剤師、薬学研究者をはじめ、2,400名を超える多分野の先生方にご参加頂くことができました。

様々な疾患に基づく身体的・精神的苦痛からの解放には、患者様やご家族を中心に複数の医療専門職が力を合わせて診療に携わる医療、いわゆるチーム医療の実践が必要不可欠です。このことは、緩和医療の分野においても例外ではなく、薬剤師は医師や看護師のみならず、様々な専門性を有するメディカルスタッフ、さらには医療ソーシャルワーカー等ともより綿密な連携を図っていくことが重要です。したがって、薬学領域とともに、医学、看護学、その他多くの学問領域に関わる医療の専門家が、より有効性と安全性の高い緩和薬物療法の実践に向けて議論する場を提供することは、本学会に与えられた大きな責務であります。このような考えのもと、本年会では、チーム医療の理念に基づいた患者様本位の質の高い緩和薬物療法の実現に主眼をおき、メインテーマを「共に語ろう・・・緩和医療チームと薬剤師の未来」と致しました。

本年会では、特別講演3題および招待講演4題をはじめ、バラエティーに富んだプログラムを企画致しました。特別講演では、消化器外科の世界的権威である北島政樹先生(国際医療福祉大学学長)、日本緩和医療学会理事長の恒藤暁先生(大阪大学大学院医学系研究科教授)、ならびに日本サイコオンコロジー学会代表理事の大西秀樹先生(埼玉医科大学国際医療センター教授)のお三方をお招きし、それぞれのお立場から緩和医療の現状と未来についてご講演頂きました。また、招待講演では、緩和医療にまつわるキーワードとして「心療内科」、「がん専門薬剤師」、「アロマセラピー」、「笑い」を取り上げ、それぞれの領域でご活躍の先生方にご講演頂きました。シンポジウムにつきましては、公募企画の中から内容的に幅広くかつ会員の皆様のニーズにお応えできるようなテーマ21題を採択致しましたが、いずれのシンポジウム会場も非常に盛況でした。さらに、ワークショップの企画に際しては多職種の先生方にご協力頂き、「死生観」および「精神疾患」の2テーマについて議論できる機会を設けました。そして、一般演題につきましては、震災の影響で大変な時期であったにも関わらず、口頭発表とポスター発表を合わせて270題の応募を頂きました。年会当日は、日頃の研究成果が存分に披露されるとともに、発表者と聴衆の間では活発な議論が展開されておりました。尚、厳正かつ公平な審査の結果、口頭発表の中から6題が、年会優秀発表賞として選出されました。加えて、年会前日には、オレンジバルーン・プロジェクトの一環として、「共に語ろう・・・家族ががんになったとき〜親と子の絆、そして社会のサポート〜」をメインテーマとした市民公開講座を開催致しました。日頃、がんに罹患した親御さんやお子さんのみならず、その家族含めたサポートに尽力されている臨床心理士およびソーシャルワーカーの先生方にご講演頂き、がん医療における家族に絆の大切さを再認識することができました。

以上、本年会を無事成功裡に終えることができましたのも、ひとえに年会にご参加頂きました多くの皆様方をはじめ、年会開催に際して企画・運営にご尽力頂きました組織委員、プログラム委員、実行委員各位、協賛を頂きました各企業、その他ご支援頂きました多くの皆様方のお陰でございます。この場をおかりして心より厚く感謝申し上げるとともに、今後の日本緩和医療薬学会の益々の発展を祈念致します

国際医療福祉大学 薬学部 学部長・教授
第5回日本緩和医療薬学会年会長
武田 弘志

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