年会案内・報告

第4回年会報告

第4回日本緩和医療薬学会年会を終えて

2010年9月25日(土)、26日(日)の両日、鹿児島市民文化ホール(鹿児島市)をメイン会場として、第4回日本緩和医療薬学会年会を開催いたしました。
本年会では、病院薬剤師、開局薬剤師、薬学研究者など様々な分野で活躍する薬剤師が一堂に会し、お陰さまで2,400名を超える方々にご参加いただきました。
本年会のメインテーマは、「みんなでふくらまそう こころでつなぐ緩和医療 −今、知識を深めて実践へ−」とし、これまで緩和医療について研鑽を積んでこられた先生方をはじめ、これから緩和医療に携わっていく方々にとって、本年会が緩和医療に関する知識、技能、態度を深め、実践につなげていただく絶好の機会となることを願い、企画運営いたしました。

日本緩和医療薬学会の年会は、第1回から第3回まで首都圏で行われてきましたが、今回、鹿児島ということで、初めての地方都市開催となりました。このような年会を地方で開催することで、その地域における緩和医療への関心を一気に高めることができると思います。
鹿児島でも薬剤師が緩和医療に取り組み始めたところですが、年会の開催によって、当地でも緩和医療に対する機運が高まり、県内から450名以上の方が参加されました。また、地域の医療従事者が年会に参加することをきっかけに、学会会員になったケースもあり、学会の発展にもつながったのではないかと思います。

また、緩和医療は、まさにチーム医療であることから、年会開催に当たっては、日本緩和医療学会、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本看護協会など25団体のご後援をいただき、薬剤師だけでなく、医師、看護師に加え、臨床心理士、理学療法士、さらに、製薬会社の学術担当者や医薬情報担当者などにも、参加を呼びかけ、多数の方々にお集まりいただきました。

さて、プログラムについてですが、特別講演2題、招待講演4題を含め多くのシンポジウムを企画し、いずれも非常に盛況となりました。特別講演では、緩和医療の第一人者で、日本で初めてホスピスを立ち上げられた金城学院大学長の柏木哲夫先生が、「緩和医療のこころ」をテーマにご講演され、先生の緩和医療への熱い思いに参加者一堂、強い感銘を受けました。
また、日本緩和医療学会の緩和ケア普及啓発作業部会で、オレンジバルーンプロジェクトの中心を担っておられる兵庫県立大学看護学部教授の内布敦子先生にご講演いただき、一般市民への緩和ケア普及の必要性について改めて考えさせられました。

メインのシンポジウムでは、緩和医療薬学会の評議員の先生方からシンポジウムの企画を募集する形式を採り、寄せられた33の応募から過去最高数となる20テーマを採択しました。基礎研究から、薬学教育、地域医療、患者接遇に至るまで、非常に多岐に渡るテーマとなり、今回の年会の特徴ともなりました。
特に、基礎研究関連では、いずれも満席となる活況で、薬学の底辺の深さ、力強さを強く感じる、内容の濃い、充実したものとなりました。

一般演題においても、口頭演題74題およびポスター演題315題の計389題もの登録をいただき、過去最高数となりました。いずれの会場でも非常に活発な討論が行われました。
なお、今回は口頭演題から3題、ポスター演題から6題の優秀発表賞を選出いたしました。

また、今回からの新たな試みとして、日本緩和医療薬学雑誌に掲載された論文の中から、優秀論文発表賞が選考され、本年会では、受賞された聖路加国際病院薬剤部の塩川満先生と岩手医科大学附属病院薬剤部の佐藤淳也先生に受賞講演をお願いしました。
もうひとつ、初めての試みとして、企画された先生方からの熱い要望にお応えして、多職種参加型問題解決ワークショップを開催しました。医療従事者がそれぞれの立場で患者とコミュニケーションを図り、立体的な緩和ケアを目指すというもので、参加希望者が多く、非常にアクティブなものになりました。今後も多職種参加のもと、続けていただければと思います。

さらに、一般市民を対象とした市民公開講座では、オレンジバルーンプロジェクトの一環として、川越博美先生および川越厚先生をお呼びし、「家で生きることの意味−地域で支える緩和ケア−」をテーマにご講演いただいたところ、多くの市民がその話に心打たれるとともに、緩和ケアについてご理解を深めていただけたのではないかと思います。

これからの薬剤師は、病院や地域医療におけるチーム医療の中で、患者さんとより多く接することが求められる時代に突入しました。
本学会の使命は、緩和医療において、薬剤師が、基礎的な知識に基づいて臨床で十分に力を発揮出来るようにすることであり、少しでもその使命を果たすために様々な企画をいたしました。
遠路、鹿児島までお越しいただいた皆様方、ならびに、年会開催においてご後援をいただいた鹿児島県をはじめ各種団体、協賛をいただいた各企業、組織委員会、プログラム委員会、実行委員会各位、その他ご協力いただいた多くの皆様方に心より感謝申し上げ、第4回日本緩和医療薬学会年会のご報告とさせていただきます。

鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 教授・薬剤部長
第4回日本緩和医療薬学会年会長
山田 勝士

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