年会案内・報告

第10回年会報告

第10回日本緩和医療薬学会年会を開催して

2016年6月3日(金)〜5日(日)の3日間にわたり、第10回日本緩和医療薬学会年会を、アクトシティ浜松で開催致しました。

多くの社員が参加できる総会を実現するため、本年会より開催時期を社員総会と同時開催にしたことから、秋から春開催へと変更になりました。過渡期に当たる第10回は第9回の年会と8ヶ月しか離れていない開催となりましたが、過去最高である2693人の方々にご参加いただく事が出来、一般演題は286演題(口頭44題、ポスター242題)と多くの会員の皆様にご発表いただきました。

日本緩和医療薬学会は、おそらく他の薬学関連学会同様、製薬企業の協賛数が年々減ってきておりました。そこに大きな問題意識と先見の明を持っていた川村理事より、長引く不況の中、関連メーカーに一方的かつ継続的な支援を求める医療系学会運営は持続不可能であること、透明性と公平さが求められる昨今、必ずしも適切ではないこと、参加者全員にメリットがある新しい年会のあり方を考えるべきであるとのご意見を伺いました。

当学会の区切りとなる第10回年会から、その新しい年会のあり方を是非示したいと考え、川村理事に第10回年会のプロデュースを懇願しました。そして、川村理事の言う自律&自立する学術大会を、このホスピス発祥の地である浜松で実現したいと考えました。本会のテーマを「JI-RI-TSU〜緩和医療薬学の持続可能性を探る〜」とし、ソーシャル・ランチ、インフォメーション・セッション、ディベートシンポジウム、ワークショップ、参加型の懇親会、PEOPLE同窓会、など、新しいコンセプトの企画をご提案いただきました。

また、第8回年会において発信した、私たちの姿勢「私達は、よりよい緩和薬物療法の提供・支援を目指し、薬剤師と薬学研究者が一丸となって、多職種と連携し緩和医療の充実・発展に努めます」に沿って、多くの多職種にもこの薬学会にご参加いただきたいと考え、「認定看護師(CN)/専門看護師(CNS)研修会」も教育研修委員会に支援していただきました。

本年会での一番大きな改革は、企業からの支援が難しくなっている現在、製薬企業に多大な負担を強いるランチョンセミナーを設けなかったことだと考えております。参加者が自分で購入したランチを片手にアクトシティの屋上に上がり、志を共にする仲間と話をしながら、ピクニックのようなランチタイムを過ごすしながら、参加者相互の体験から学ぶというソーシャル・ランチを開催したのです。具体的には、参加登録時に1000円のランチクーポン(お土産購入券として使用も可能)を購入していただき、当日好きなランチに交換して、アクトシティの屋上に設けた、「栄養」「オピオイド」「終末期」「連携」のテーマ毎の4会場に別れ、他者と語り合いました。

展示ブースはメイン会場とは少し離れている構造上、足を向ける参加者があまり多くないという問題があるため、参加者が必然的に展示ホールへと足を向けるオペレーションとして、ポスター発表だけではなく口頭発表と、さらには展示ブースの新しい活用方法として、インフォメーション・セッションを開催しました。つまり、展示ブースのメイン部分に、口頭発表と同じ会場を設営し、参加者に情報やメッセージを投げられる場を設けたところ、製薬会社はもちろんのこと、ラベル・ポンプの会社、薬局などのこれまで展示の申し込みをしなかった組織の方々にもご参画頂くことができました。

他にも、多くの組織が協賛しやすいように価格帯を限界まで落とした、モーニングセミナーとスイーツセミナーを設け、花月堂のお菓子や新発売のハーゲンダッツアイスクリーム等の飲食物は年会側から提供して、協賛側の負担ができるだけないようにして開催致しました。

初の試みとして行なったディベートシンポジウムでは、Clica(会場内で自分の端末から司会者へリアルタイムの質問ができる)システムを導入したことにより、演者と参加者が一体となって議論ができたように思います。

参加者はそれぞれに日々貴重な経験をしています。演者から一方的に話を聞くだけでなく、ソーシャルランチを始め、ディベートシンポジウムや6つのワークショップなど、成人学習の視点から参加者相互に学び合う機会を、あらゆる場面に設計してもらいました。

参加した方々に年会参加のアンケートをお願いしたところ、438名の方に回答を頂きました。(次の「アンケート結果」をクリックすると結果を参照できます)。結果は、第10回大会について89%の人が魅力的であったとのご回答をいただき、大変満足度が高かった年会を開催できたとわかりました。特に、Clicaシステムを導入したディベートシンポジムは、63%の参加者があった方がいいと回答しており、自由記入欄には、「意見を言いやすく発展性があると感じた」との意見が聞かれ、Clicaの導入は年会をアクティブ・ラーニングの場とするための有効なシステムとなり得ることがわかりました。また、新しいコンセプトで良かった企画は、宿泊証明による還元26%、学会提供のスイーツセミナー23%、ネームホルダーの持参22%、学会提供のモーニングセミナー13%と好印象でありました。

今回、このように多くの方々に浜松の年会に参加していただけたのは、FacebookなどSNSによる広報活動により、皆さんにこれまで以上の情報を届けられ、同時に参加者の皆様にご賛同いただけた結果であると思っています。

この年会を経験し、新しい事を始めるときは強い反発もあり、理解を得るまでに多大な時間と労力がかかると痛感しました。しかし、進むべき方向を訴え、ご理解・ご賛同いただけたときには、物事を動かしとても大きな力になるのだと実感しました。

このように新しい一歩を踏み出した本年会を無事に終えることが出来ましたのも、年会プロデューサーをお引き受けくださり、確固たる理念のもとアイデア満載の年会を企画・設計してくれた川村理事の尽力あってのことです。そして、この年会の熱いメッセージを受け取り、ご理解・ご参加頂きました多くの皆様をはじめ、年会運営にご尽力頂きました関係者各位、協賛を頂きました各企業・組織、その他ご支援頂きました多くの皆様のお陰でございます。この場をお借りして深く感謝申し上げるとともに、今後の日本緩和医療薬学会の益々の発展を祈念致します。

聖隷浜松病院 薬剤部長
第10回日本緩和医療薬学会年会長
塩川満

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